ユディト(STORY) | ||
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将軍フォロフェルネスはユディトを歓迎した。兵士の報告を聞き、広間に居た側近達も満足げにニヤニヤと笑いさざめいた。将軍はユディトの思い描いていたような大男ではなく、淀んだ目と弛んだ皮膚をした中年の小男だった。横に奴隷女をはべらせながら、館の主のふるまう葡萄酒ですでにすっかり上機嫌になり、ユディトに近付くとじっとりとした目つきで上から下までなめ回した。 「まずはそなたの忠誠を見せてもらわねばな」臭い息を首筋に吹き掛けつつ、フォロフェルネスはゆっくりと言った。 ユディトはフォロフェルネスを振り払わぬ様細心の注意を払いながら、持参した金品の入った袋をそっと将軍の目の前に差し出した。将軍は軽く鼻で息を吐くとその中をあらため、横にはべっていた奴隷女に袋を渡して下がらせた。「ここへ来て酌をせい」 彼女は自分の胸部から臀部にかけて、将軍の吸い付くような視線を感じた。「ご容赦を」ユディトは恥じらうように言いつつ、誘うように微笑んだ目線を彼に向けながらするりと将軍の座っているクッションの横に滑り込んだ。 次々と葡萄酒が運ばれてきた。ユディトは言い訳程度にしか口に運ばなかったが、将軍や側近の兵士達は浴びるように飲んでいたため、半時ほどすると段々と皆の口数が少なくなり、動作が緩慢になってきた。将軍の目も空ろになり手も小刻みに震えはじめたが、ユディトは気付かぬ振りをして彼の持つ牡牛の角の形をしたジョッキが空になるとすぐ、なみなみと葡萄酒を注ぎ足した。 やがて広間に動く者は誰もいなくなった。空気がどんよりと濁り、誰も呼びつけないので奴隷達も広間に出入りしなくなった。 ユディトは周囲を確認するとゆっくりと立ち上がり、傍に倒れていた兵士の剣を抜き取り刃先を確認すると、両手でしっかりと大きくふりかぶって将軍の首目掛けて鋼の刀を振りおろした。 |
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